2009年 07月 23日
日蝕 |
日蝕が終わった途端、各方面から悲喜交々の声が聞こえてきた。
たしかに、国内旅行で34万円~も取っておきながら、「…見られなかったら…」に対するオトシマエが一切なかったというツアーの非常識さは問題というか論外。地べたに寝かせて、インスタントモノを食わせて、シャワーすら満足に浴びられない…アドベンチャーツアーでももう少しマシな生活をさせると思う…ってか、僕は山岳ガイド時代、そんな目に遭わせた事はないぞ(後述)
通常(アドベンチャーツアーなどを除いた)自然現象を相手にするツアーは、目的が達せられなかったことに対するオトシマエを用意している。往復の交通費をはじめ、旅程表に定められた食事、宿泊ホテルのランク、主たる目的地に到着前後の観光ツアーなどがそれだ。今回のツァー参加者の様子をみていると、どうもそういった「常識的なオトシマエ」が用意されていなかったように見える。
確かに、インフラには金がかかったかもしれないが、そういうものはお国からお金が出たんじゃなかったの?受け入れることができる人数をはるかに超えた1500人なんて人数を設定するから無理が出たんじゃないのかい?島の水は限られています。はいはい分かりますよ。でもね、船の上ではもっとゴージャスな生活をはるかに満喫した人達がいるわけですよ…船と陸、どっちがやりやすいのか、素人の僕には分からないなあ…
でもね、終わってみて「これで良かったのかもしれない」と思った。
ツアーでひどい目に遭った人達の大半は、二度とトカラを訪れないだろうし、そもそも日蝕なんていうことでもなければ、日本地図のどこにトカラがあるかなんて知ることもなかっただろう。
トカラは(たぶん)人が来ない事でその自然な美しさを保っているはずで、石垣や小笠原みたいになったら終わりなんだから…トカラを本当に愛している人は、きっとそのことを知っているはずだ。
今回のことは神様の思し召しなんだ。それには二つのことがある。
日蝕という、世界中から注目されるイベントに、欲の皮がつっぱらかった人達に罰が当たったこと。トカラは、これで近代化が百年遅れた。この件でトカラには、お上から数億とも言われる補助金が下りたそうだが、持ちつけない金に目がくらんでもう一儲けしようと目論んだことが、トカラの印象を悪くしたことは間違いない。
元パッカーのウチの女房が「自分が本当に好い場所だと思ったら他人には教えないことだ」って言ってたが、その通りだと思う。トカラの近代化が百年遅れた事で、当分の間、トカラの自然は守られるだろう。そう人類に勝る破壊者はいないのだ。
ところで現実的な話…山岳ガイド時代、いちおう約款に「登れなくても返金しません」とは謳うものの、現実に雨などで登山そのものが(実質的にでも)中止になってしまった場合、経費を除いた部分の半額程度は自主返金していた。そうしないと、個人経営のガイドの場合、二度と来なくなってしまうからだ。
誰か(客の一人)に言われた。あなたは「金儲けの才能がない」と…人の生き死にに関わる事を生業としている人間は、儲けてはいけないんだよ。そう、百姓とガイドは儲けちゃいかん。自衛隊は…もっと儲けて好いな(笑)
山岳ガイドは、昨今、大手旅行会社/山岳ツアー会社などに寄りかかる傾向があるが、その結果が「無理な行程と過酷なダンピングを迫られ、数をこなさないと食っていけない」トムラウシの悲劇のような事件につながるんだろうなって思う。トムラウシで関わったガイドは、一人として登攀や海外遠征の世界で名前を聞いたことがある人はいない。縦走に登攀の技術は関係ないようで重要なんだ。
登攀ってのは、雨が降ったり風が吹いたりしても逃げ場がないから、天候の読みは縦走屋に比べたらはるかにシビアだし、万一悪天に見舞われたときの撤収方法や対処方法に関しての備え、それも限られた道具や状況を味方につける知恵を持っている。
それと、大きい山登り(数週間~数ヶ月)の経験がないやつは、山で一日二日余計にかかっても動じないが、日本の山登りしかしたことがないやつにとっては、一泊二日が二泊三日に延びることは大事件のようだ。そのあたりの経験の浅さが、判断を狂わせた可能性は充分にある。
やっぱ、登攀と海外遠征の経験がないやつに、ガイドやらせちゃいかんよ。オイラ、もう引退したから関係ないけど…
今日も、熱海の海は静かである。
たしかに、国内旅行で34万円~も取っておきながら、「…見られなかったら…」に対するオトシマエが一切なかったというツアーの非常識さは問題というか論外。地べたに寝かせて、インスタントモノを食わせて、シャワーすら満足に浴びられない…アドベンチャーツアーでももう少しマシな生活をさせると思う…ってか、僕は山岳ガイド時代、そんな目に遭わせた事はないぞ(後述)
通常(アドベンチャーツアーなどを除いた)自然現象を相手にするツアーは、目的が達せられなかったことに対するオトシマエを用意している。往復の交通費をはじめ、旅程表に定められた食事、宿泊ホテルのランク、主たる目的地に到着前後の観光ツアーなどがそれだ。今回のツァー参加者の様子をみていると、どうもそういった「常識的なオトシマエ」が用意されていなかったように見える。
確かに、インフラには金がかかったかもしれないが、そういうものはお国からお金が出たんじゃなかったの?受け入れることができる人数をはるかに超えた1500人なんて人数を設定するから無理が出たんじゃないのかい?島の水は限られています。はいはい分かりますよ。でもね、船の上ではもっとゴージャスな生活をはるかに満喫した人達がいるわけですよ…船と陸、どっちがやりやすいのか、素人の僕には分からないなあ…
でもね、終わってみて「これで良かったのかもしれない」と思った。
ツアーでひどい目に遭った人達の大半は、二度とトカラを訪れないだろうし、そもそも日蝕なんていうことでもなければ、日本地図のどこにトカラがあるかなんて知ることもなかっただろう。
トカラは(たぶん)人が来ない事でその自然な美しさを保っているはずで、石垣や小笠原みたいになったら終わりなんだから…トカラを本当に愛している人は、きっとそのことを知っているはずだ。
今回のことは神様の思し召しなんだ。それには二つのことがある。
日蝕という、世界中から注目されるイベントに、欲の皮がつっぱらかった人達に罰が当たったこと。トカラは、これで近代化が百年遅れた。この件でトカラには、お上から数億とも言われる補助金が下りたそうだが、持ちつけない金に目がくらんでもう一儲けしようと目論んだことが、トカラの印象を悪くしたことは間違いない。
元パッカーのウチの女房が「自分が本当に好い場所だと思ったら他人には教えないことだ」って言ってたが、その通りだと思う。トカラの近代化が百年遅れた事で、当分の間、トカラの自然は守られるだろう。そう人類に勝る破壊者はいないのだ。
ところで現実的な話…山岳ガイド時代、いちおう約款に「登れなくても返金しません」とは謳うものの、現実に雨などで登山そのものが(実質的にでも)中止になってしまった場合、経費を除いた部分の半額程度は自主返金していた。そうしないと、個人経営のガイドの場合、二度と来なくなってしまうからだ。
誰か(客の一人)に言われた。あなたは「金儲けの才能がない」と…人の生き死にに関わる事を生業としている人間は、儲けてはいけないんだよ。そう、百姓とガイドは儲けちゃいかん。自衛隊は…もっと儲けて好いな(笑)
山岳ガイドは、昨今、大手旅行会社/山岳ツアー会社などに寄りかかる傾向があるが、その結果が「無理な行程と過酷なダンピングを迫られ、数をこなさないと食っていけない」トムラウシの悲劇のような事件につながるんだろうなって思う。トムラウシで関わったガイドは、一人として登攀や海外遠征の世界で名前を聞いたことがある人はいない。縦走に登攀の技術は関係ないようで重要なんだ。
登攀ってのは、雨が降ったり風が吹いたりしても逃げ場がないから、天候の読みは縦走屋に比べたらはるかにシビアだし、万一悪天に見舞われたときの撤収方法や対処方法に関しての備え、それも限られた道具や状況を味方につける知恵を持っている。
それと、大きい山登り(数週間~数ヶ月)の経験がないやつは、山で一日二日余計にかかっても動じないが、日本の山登りしかしたことがないやつにとっては、一泊二日が二泊三日に延びることは大事件のようだ。そのあたりの経験の浅さが、判断を狂わせた可能性は充分にある。
やっぱ、登攀と海外遠征の経験がないやつに、ガイドやらせちゃいかんよ。オイラ、もう引退したから関係ないけど…
今日も、熱海の海は静かである。
by mikeAlpha
| 2009-07-23 12:34
| 世情